田畑
まず、講演をお願いする前に感じていたことから教えてください。朝霞高校でキャリア教育や進路指導をされていて、どんな課題感がありましたか。
長野先生
一番気になっていたのは、生徒が自分の言葉で将来を語れない場面が多いことでした。
進路希望調査には「大学」「専門学校」「就職」と書けるけれど、「どうして?」と理由を聞くと「なんとなく」「親に言われて」などで会話が止まってしまう。
本人なりに考えてはいるのでしょうが、それを言葉にして人に伝えるところまではなかなか届いていない、という感覚がありました。
田畑
そこで、「これからの君たちに求められること」というテーマの講演を企画したのですね。
朝霞高校さんから弊社へ講演のご相談いただいたとき、どんなゴールイメージをお持ちでしたか。
長野先生
生徒たちが卒業後に出ていく社会は、少子高齢化や格差拡大、終身雇用の揺らぎなど、ニュースでよく耳にするキーワードだらけの“厳しい時代”です。講演でも、これまでの日本とこれからの日本の違いや、学生と社会人の世界のギャップについて触れていましたよね。ただ、「厳しい」と伝えるだけでは、生徒はただ不安になるだけです。
そこで、「だからこそ、どんな力を身につけておけばいいのか」「そのために今、学校生活で何を大事にしてほしいのか」まで、一気通貫で伝えてもらいたいと考えました。
田畑
これまでも外部講師を招く機会はあったと伺いましたが、そのうえで今回の講演を検討された理由は?
長野先生
これまでも外部講師の方をお招きし、有意義な講演を行ってきましたが、どうしても“いい話を聞いて終わり”になりがちでした。
講演直後は「感動した」と言う生徒もいるのですが、そのあと面談をすると、進路の話があまり深まっていない…ということが多くて。
そこで、「話を聞くだけでなく、生徒自身が考えたり書いたりする時間がある講演をやってみたい」と思っていました。
PRONALさんとお話する中で、ワークを交えながら、生徒が自分のこととして考える時間をつくるという点に惹かれて、お願いすることにしました。
田畑
当日の体育館の雰囲気や、生徒の様子はどうでしたか。
長野先生
最初は、よくある“キャリア講演”の空気でした。
日本のこれまでの発展や、これからの日本社会の厳しさ、学生と社会人の違いなどの話から始まりましたよね。
ただ、田畑さん自身の剣道での挫折とインターハイ準優勝の話、アメリカ留学に挑戦したストーリーに入っていくあたりから、空気が変わりました。
「一度はふてくされて練習をサボった」「進学に失敗して日本に行き場がなかった」など、あえて格好良くない部分まで見せてくれたことで、生徒たちが一気に引き込まれていった印象があります。
田畑
講演が終わったあと、生徒たちの変化や、印象に残った言葉はありますか。
長野先生
進路面談のときに、「なんとなく○○に行きたい」から、
「部活でこういう経験をして、自分にはこういうところが向いている気がするので、この分野を考えています」と、理由付きで話す生徒が増えました。
もちろん、全員が劇的に変わるわけではありませんが、少なくとも「なんとなく」だけで終わらせず、自分の気持ちを言葉にしようとする姿勢が見えるようになりました。
講演中のワークで書いたメモをそのまま持ってきて、「ここに書いた“自分との小さな約束”を、まずはやってみます」と報告してくれた生徒もいます。
田畑
この講演を通して、先生ご自身の指導や声かけに変化はありましたか。
長野先生
ありました。
特に、「将来どうしたい?」といきなり聞くのではなく、
・「最近、なんでだろうって考えたことは?」
・「自分とのどんな小さな約束なら、今日から守れそう?」
といった、一歩手前の問いから始める感覚が、自分の中にストックされたのは大きいです。
講演中に田畑さんが投げかけていた問いは、そのままホームルームでも使えるものが多くて、「キャリア教育=特別な時間」ではなく、日常の対話の中でもできるんだと感じました。
田畑
最後に、どのような学校や先生に、今回のような講演が合うと思われますか。
長野先生
キャリア教育に力を入れたいけれど、
・生徒の反応がいまひとつ見えない
・講演がその場限りになってしまっている
と感じている先生方には合うのではないかと思います。
話を聞かせるだけではなく、生徒自身が手を動かし、考え、言葉にする時間があるので、進路面談やその後の授業にもつなげやすいと感じました。
朝霞高校にとっても、「将来のことを自分の言葉で話せる生徒を増やしたい」という私たちの思いに、一歩近づくきっかけになった講演でした。